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086. 三洋電機 LM8360 デジタル時計
三十年ほど前に "秋月電子通商" で、専用の LSI と LED がセットになったものを、しかも2セットも購入したものが、今まで手も付けないでずっとそのままで
眠っていました。 部品の整理をしていて最近発見したのですが、その資料も僅かに残っていたので組み立ててみました。
三洋電機の時計用LSI "LM8360" と、COPAL社の時計用4桁緑色7セグメントLED "CLG-263-21" を使用した、デジタル時計です。
赤色7セグメントLED 4個 を使用した、デジタル時計です。( 2013/12 変更 )
前作 "085. 沖電気 MSM5509 デジタル時計" よりも、もう少し古い LSI と思われます。 基準クロックには
クリスタルを使用せず、商用AC電源周波数を用いており、4桁LEDのスタティック駆動表示です。
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実はこのディジタル時計、2006 年 10 月に組み立てたまま火入れも行わずに、下記の プリント基板パターン図(誤り)(写真)
のような状態で、ずっと放置をしてありました。
今回、ホームページで公開するにあたって、動作を確認するために7年ぶりに初めて火入れをしてみたのですが、しかし、LEDの様子がどうもおかしい。 左1桁目(10時桁)が
まともに表示できません。 どうやら、下記の 回路図(誤り) には誤りがあるようです。
最近になって、ずいぶん古い LSI にもかかわらず、ネットでこの LSI の、詳細なメーカーの データシート が入手できたこともあり、再検討をしてみました。
原因は2つありました。
まず1つ目は、"秋月電子通商" からの僅かな添付資料だけでは、この LSI の詳細なことが理解できず、誤って解釈をしていた部分があったこと。 2つ目は、LSI とセットになっていた、
COPAL社の時計用4桁緑色7セグメントLED "CLG-263-21" の不良(?)と思われる部分があったこと。
COPAL社の "CLG-263-21" は左上写真のようなもので、右表は "秋月電子通商" の添付資料の一部を抜粋したものです。 同表には、Pin No. 2 ( PM Anode )、
Pin No. 3 ( AM Anode )、Pin No. 5 ( 10's Hour F Anode ) が接続されているように書かれていますが(本来、接続されていて当たり前)、実際には、左上写真の中の黄色↑の同ピンには、
何も接続されていませんでした。 しかも2セット購入したうちの2個のLEDとも、同状態でした。 しかし、三十数年も経っている今となっては、"秋月電子通商" にクレームを言うことも
出来ません。
結局、この COPAL社の "CLG-263-21" の使用は断念し、また、現在手持ちの中に緑色7セグメントLEDがなかったため、赤色7セグメントLED4個を使用して回路検討をし直したのが、
下記の 回路図(修正後) です。
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■ 回路図(誤り) ■
| 回路図 (Sanyo_LM8360_DegitalClock.CE3)
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■ プリント基板パターン図 (部品面)(誤り) ■
| プリント基板パターン図 (部品面) (Sanyo_LM8360_DegitalClockPC.CE3)
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■ プリント基板パターン図 (ハンダ面)(誤り) ■
| プリント基板パターン図 (ハンダ面) (Sanyo_LM8360_DegitalClockPC1.CE3)
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上述したように、三洋電機の時計用LSI "LM8360" の機能を誤って解釈をしていたことと、COPAL社の時計用LED(モジュール) "CLG-263-21" の不良のために、
その使用を断念したことで回路を再検討した結果、以下のような修正した回路図、およびプリント基板パターン図を作成しました。
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■ 回路図(修正後) ■
| 回路図 (Sanyo_LM8360_DegitalClock2.CE3)
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■ 電源の供給 ■
三洋電機の時計用LSI "LM8360" のデータシートを見ると、LSI の動作電圧としてDC 8〜16V 程度を必要とし、また、その基準クロックには、クリスタルを使用しないで
商用AC電源周波数を用いるため、今回は小型の電源トランスを使用してそれらを供給することにしました。
具体的には、下写真のようにトランス式のACアダプタから取り出したトランスを使用しています。 最近では電源トランスも高額なパーツの部類となり、なかなか馬鹿にはなりません。
10年ほど前にこういう時のためにと、"秋月電子通商" で格安で数個購入しておいたものの一つで、今回役に立たせることが出来ました。
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料理(ばらす)前のトランス式のACアダプタ |
いきなりすべてをばらした後の写真で、取り出した中身を並べたところ |
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抵抗(???)とセラミックバリスタ |
ハトメラグ(Φ2 x 3)を打ち、入力端子(AC100V)と出力端子(AC12V)を取り付け加工 |
上写真の左下に移っているものは、抵抗(???)らしきものとセラミックバリスタです。 左側の抵抗(???)らしきものは、5色表示のカラーコードと解釈して
まともに読めば、"茶赤青金 緑" ですから、12.6Ω D:±0.5% となりますが、こんなところに±0.5% という精密級のものを使用する意味がないですし、また4色表示のカラーコードと解釈すれば、
12MΩ J:±5% となり実測値と近くなって妥当なんですが、残りの帯 "緑" は何の意味でしょうか?
また、右側のものは "TNR G271K" と銘が打ってあり、ネットで調べてみると日本ケミコンのセラミックバリスタであることが分かりました。
ともにばらす前のようにもう一度接続し直して使用することにし、上図はその回路図で、上写真のようにハトメラグ(Φ2 x 3)を打って、入力端子(AC100V)と
出力端子(AC12V)を取り付け、一つの部品として使えるように加工しました。 ただし、出力の AC12V というのは無負荷時の電圧で、実際には負荷を繋ぐと 10V 位に落ちます。
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■ ケース外観と内部の様子 ■
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ケース正面の斜め上から見たところ |
ケース背面の斜め上から見たところ |
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ケース左側面の斜め上から見たところ |
ケース右側面の斜め上から見たところ |
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蓋をあけてケース内部を見たところ |
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蓋をあけて内部をケース真上から見たところ |
蓋をあけて右側面の斜め上から見たところ |
ケース裏面を真上から見たところ |
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■ 機能と使用法 ■
- この時計機能の特徴として現在時刻表示機能の他に、スヌーズ付きのアラーム機能、スリープタイマ機能(最長59分)を有する。
- それらの表示範囲を次表に示す。
時計およびアラ−ム表示(12時間) |
AM 1 : 00 〜 PM 12 : 59 |
上位桁0ブランキング |
時計およびアラ−ム表示(24時間) |
00 : 00 〜 23 : 59 |
0ブランキングなし |
秒表示 |
0 : 00 〜 9 : 59 |
上位1桁ブランキング |
スリープ表示 |
00 〜 59 |
上位2桁ブランキング |
- BLANKING スイッチ(ジャンパー)
ブランキングコントロールをするためのスイッチで、通常は DISPLAY(上)側に設定して使用する。 ENABLE(下)側に設定するとすべての LED 表示が消灯する。
- 50/60 Hz SELECT スイッチ(ジャンパー)
基準クロックには商用AC電源周波数を用いるため、50Hz 地域ではこのジャンパスイッチを 50Hz (上)側に、60Hz 地域では 60Hz (下)側にする。
- DISPLAY SELECT スイッチ(ジャンパー)
表示モードの選択変更をするには、DISPLAY SELECT ジャンパスイッチを、次表の位置にする。
1 |
現在時刻が表示される |
2 |
秒および分の1桁目の時間が表示される |
3 |
アラーム時間が表示される |
4 |
スリープ時間が表示される |
- TIME SET 1, 2 ボタンスイッチ(白色)
時刻設定用に2つの白色押しボタンスイッチ(TIME SET 1, 2)があり、次表のような動作をする。
表示モード |
操作スイッチ |
動作内容 |
現在時刻表示 |
1 : FAST |
分桁に 50 / 60 Hz のスピードで +1 される。 |
2 : SLOW |
分桁に 2 Hz のスピードで +1 される。 |
1 & 2 : 両方 |
分桁に 50 / 60 Hz のスピードで +1 される。 |
アラーム表示 |
1 : FAST |
分桁に 50 / 60 Hz のスピードで +1 される。 |
2 : SLOW |
分桁に 2 Hz のスピードで +1 される。 |
1 & 2 : 両方 |
12 時間表示のとき : AM 12:00 / 24 時間表示のとき : 00:00 にセット する。 |
秒表示 |
1 : FAST |
00 にセット する。 分への桁上げはない。 |
2 : SLOW |
秒をストップ(ホールド)する。 |
1 & 2 : 両方 |
12 時間表示のとき : 現在時刻カウンタを AM 12:00 / 24 時間表示のとき : 現在時刻カウンタを 00:00 にセット する。 |
スリープ表示 |
1 : FAST |
分桁に 50 / 60 Hz のスピードで -1 される。 |
2 : SLOW |
分桁に 2 Hz のスピードで -1 される。 |
1 & 2 : 両方 |
分桁に 50 / 60 Hz のスピードで -1 される。 |
- BRIGHTNESS ボリウム
ブライトネスコントロール用のボリウムで、左に回すと LED の輝度が暗くなり、右に回すと明るくなる。
- 12H / 24H SELECT スイッチ(ジャンパー)
12 / 24 時間の切り替えをするには、Display 基板に搭載されている SELECT ジャンパスイッチを、希望する 12H / 24H 側に設定をする。 この SELECT ジャンパスイッチは、
7個で1セットのため、すべてを同位置側に設定する必要がある。
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(12H 表示例) AM 12 : 34 |
(24H 表示例) 23 : 45 |
12 時間表示のとき、最上位桁の 7セグ LED (回路図(修正後)中右下の C-551SRD の Pin Assign 図を参照) のセグメント "F" の点灯で AM を表し、
同じくセグメント "E" の点灯で PM を表す。 また、時分の間にあるコロン(:)が1秒周期で点滅を繰り返す。 なお、24 時間表示のときには コロン(:)の点滅表示はない。
- ALARM OFF ボタンスイッチ(赤色)
アラームカウンタの内容(アラーム設定時間)と現在時刻カウンタが一致すると、アラーム出力がオンとなる。 この状態は何もしなければ 59分間続き、その後オフとなる。
なお、ALARM OFF ボタンスイッチ(赤色)をオンにしたり、DISPLAY SELECT ジャンパスイッチを 4: スリープ時間 に設定すると、59分経過しなくてもその時点で直ちにアラーム出力は
オフとなる。 また、次の SNOOZE ボタンスイッチ(緑色)をオンにすると、アラーム出力は一時的にオフとなる。 なお、ALARM OFF ボタンスイッチをオンにし続けていると、
アラーム設定時間と現在時刻が一致しても、アラーム出力がオンになることはない。
- SNOOZE ボタンスイッチ(緑色)
アラーム出力がオンになっている間に、この SNOOZE ボタンスイッチ(緑色)を一時的にオンにすると、アラーム出力はオフになり、8〜9分経過後再びオンになる。
スヌーズ機能はアラーム出力がオンになっている間、繰り返し使うことができる。
- 表示モード選択 DISPLAY SELECT スイッチ(ジャンパー) を 4: スリープ表示 にし、時刻設定 TIME SET 1, 2 ボタンスイッチ(白色)
を上述のような操作により、必要な時間間隔に設定することができる。 このスリープカウンタはダウンカウンタで構成され、カウンタの内容が 00分に到達すると出力はオフになる。
スリープカウンタが 00分になった後はカウント動作を停止し、次にセットするまでスリープ出力はオフのままである。 また、このスリープタイマは、次のような方法で
ワンタッチで 59分を設定したり、ワンタッチでリセットすることが可能である。
- ワンタッチで 59分にセットする方法
スリープ表示以外の表示モードにしておき、SNOOZE ボタンスイッチ(緑色)を一時的にオンにした後にスリープ表示にすると、59分にタイマがセットされスリープ出力がオンになる。
- ワンタッチでスリープ出力をリセットする方法
スリープ出力がオンである時に、SNOOZE ボタンスイッチ(緑色)を一時的にオンにすると、スリープ出力はオフになる。
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■ プリント基板(1)パターン図 (部品面)(修正後) ■
今回はプリント基板を新たに作り直すのをやめて、誤りのある同基板を修正して使用が可能なようにと、極力修正個所が少なくなるような配慮と慎重な作業で、
不要になった部品とハンダを除去しました。 また、12/24H SELECT 用のジャンパースイッチが、3個から7個に増えたためにこの基板上では連続したスペースが確保できないため、
プリント基板(2)の方へ追い出しました。
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| プリント基板(1)パターン図 (部品面) (Sanyo_LM8360_DegitalClock2PC.CE3)
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■ プリント基板(1)パターン図 (ハンダ面)(修正後) ■
| プリント基板(1)パターン図 (ハンダ面) (Sanyo_LM8360_DegitalClock2PC1.CE3)
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■ プリント基板(2)パターン図 (部品面)(修正後) ■
プリント基板(2)では、単体の7セグメントLED 4個をモジュール化し、COPAL社の "CLG-263-21" の使用時と同様に、コネクタでプリント基板(1)と接続をします。
なお、上述のように 12/24H SELECT 用のジャンパースイッチをプリント基板(1)から追い出して、このプリント基板(2)に収納しました。
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| プリント基板(2)パターン図 (部品面) (Sanyo_LM8360_DegitalClock3PC.CE3)
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■ プリント基板(2)パターン図 (裏面)(修正後) ■
このプリント基板(2)には、両面スルーホール・ガラス・ユニバーサル基板を使用しています。 通常の片面ガラス・ユニバーサル基板に比べて倍ほどの高価格で、
しかも私個人的には非常に使いづらいのでいつもは敬遠していますが、今回は裏面にもコネクタを配置するため、やむを得ず使用しました。 両面でもスルーホールになっていなければ
使いやすくなるし、価格も抑えられると思うのですが ・・・
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| プリント基板(2)パターン図 (裏面) (Sanyo_LM8360_DegitalClock3PC1.CE3)
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■ その他プリント基板 ■
その他、部品をケースに固定するために、プリント基板をカットしたときに出た残りの端材を利用して、次のようなものを作りました。
左の基板は ALARM、SLEEP の各リレー接点を、外部に引き出すためのターミナルブロックを取り付けたもの。 また、右の基板は 上述 のように
作製した電源トランスを、2液混合型のエポキシ樹脂系接着剤 "セメダイン EP001" で基板に接着したものです。
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■ ケース加工図 ■
使用したケースは、100均で購入した "はがきケース (L-8821) サナダ精工株式会社" ポリプロピレンケースです。
| ケース加工図 (Sanyo_LM8360_DegitalClockCS.CE3) |
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左側面を見たところ |
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上面から見たところ |
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裏面から見たところ |
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■ 使用部品表 ■
(主要部品: IC, トランジスタ等) |
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(データシート) |
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時計用 LSI |
.................... |
LM8360 |
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トランジスタ |
.................... |
2SC509 |
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ブリッジダイオード |
.................... |
DF06M |
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ダイオード |
.................... |
1N4148 |
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時計用7セグ LED |
.................... |
CLG-263-21 |
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7セグメントLED |
.................... |
C-551SRD |
|
Φ2赤色LED |
.................... |
L-180LRT |
| 部品表
| Excel ファイル (Sanyo_LM8360_DegitalClock_parts.xls)
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■ 参考資料 ■
秋月資料 (LM8360,CLG-263-21)
三洋半導体ニューズ LM8360 ..... ( 2013/12 現在、http://www.digchip.com/datasheets/parts/datasheet/413/LM8360-pdf.php から入手が可能 )
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初版:2006年12月10日、初公開:2013年12月20日、最終更新:2023年11月1日