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176. FET & CRD選別冶具(改訂版)

[ 初公開日:2015年5月31日 ]

 サイト "情熱の真空管" で紹介されていた、"FET & CRD選別冶具「やぐ」" を製作してみました。

 DC調整回路なしでJ-FET差動回路を組むために使用する、高精度の2SK30Aペアや 2SK170ペアなどを選別するための、簡単な測定器具です。

 当初、(旧版)の "FET & CRD選別冶具" をこのサイトに公開する予定でいたのですが、オリジナルサイトでは、 性能アップとともにより使いやすいように見直された(改訂版)が発表されていたので、これを機に急遽、私も(改訂版)にバージョンアップをしてみました。

 したがって、このサイトでは(改訂版)(旧版)ともにページを公開していますが、ハードとしての(旧版)は既に存在していません。

■ 回路図 ■


 回路図のほぼ中央に位置するJP端子は、ここに電流計を繋いで直接電流測定が可能にしてあるが、通常はジャンパをしておく。

| 回路図 (J-FET_CheckerII.CE3) | ページトップ |

■ 使用法 ■

  • 2つのトグルスイッチ SW1、SW2 を組み合わせることで、被測定FETのIdss、定電流特性(可変)、その時のバイアス(ゲート〜ソース間電圧)の3つが測定できる。

  • 現在、手持ちのデジタル・テスター(MASTECH M-830B)を、DC 2000mV レンジに合わせておき、本機の DC V 端子の+−間に接続をする。

  • 測定方法は、まず、下表 (1) のスイッチの組み合わせで、デジタル・テスターの測定電圧(mV) / 100 によって、被測定FETの Idss(mA) が測定できる。

  • 次に、下表 (2) のスイッチの組み合わせのとき、ロータリスイッチ SW3、および SW3 を Free に合わせた場合にはボリュームによって、
    被測定FETに流すドレイン電流 ( Id(mA) = 測定電圧(mV) / 100 ) *1 値を決める。

  • 続いて、下表 (3) のスイッチを組み合わせることで、その時の測定電圧(mV)が バイアス Vgs(mV) となる。

  • 連続して複数のFETの選別を行う時は、定電流特性を固定したまま、あとはひたすら被測定FETを取り替えつつバイアス値を読み取る。

  • SW1テスター位置SW2測定モード測定項目
    (1)100Ω両端電圧Idss(定電流回路OFF) 被測定FETの Idss(mA) = 測定電圧(mV) / 100
    (2)100Ω両端電圧バイアス(定電流回路ON) ドレイン電流 Id(mA) = 測定電圧(mV) / 100 *1
    (3)バイアス(ゲート〜ソース間電圧)バイアス(定電流回路ON) バイアス Vgs(mV) = 測定電圧(mV)

    *1 ドレイン電流 Id(mA) は、 2SK30A = 0.75mA, 2SK170 = 2mA に設定する。

    各スイッチの機能

     SW1 : テスターで測定する対象を、(上側) ドレイン電流か、(下側) FETのバイアスかを切り替える。

     SW2 : 測定モードを、(上側) Idss または CRD の定電流特性か、(下側) FETのバイアス特性かを切り替える。

     SW3 : FETのバイアス特性を測定する際の、ドレイン電流値を切り替える。 Free に合わせた場合には、ボリューム( 0.5 〜 5mA の範囲)によって設定。

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■ ケース内部の様子 ■

当初、パネル面を写真右側の裏蓋側にしようと思っていた*2 のですが、見てのとおり突起物がたくさんあって邪魔になり、面の周囲部分がパネルとして使用できないため、 パネル面には不向きとしてあきらめました。

しかし、結果として写真左側の箱部分をパネル面としたことは、DCジャック等を含めて片側にすべての部品を集中することができて、正解のようです。

*2 ケース箱側面が多少のテーパー状になっていて、写真右側の蓋パネル面の方が、写真左側の箱パネル面よりも少しばかり大きい(面積が広い)ため。

本機を改訂版に改造するに当たって、ロータリスイッチ、および3個の多回転半固定ボリュームを追加実装したのですが、それらが裏蓋を閉めたときに裏蓋の下側に位置する2つの丸い突起物に ぶつかってしまい、蓋が閉まらなくなってしまいました。

そこで、この2つの丸い突起物をやすりで削って、1.5 〜 2 mm ほど短くしました。
裏蓋を外して真上方向から見たところ
左手前上方向から見たところ 右手前上方向から見たところ
手前上方向から見たところ 真上方向から見たところ 逆手前上方向から見たところ

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■ プリント基板(1)パターン図 (部品面) ■

 プリント基板(1)については、旧版のものと比べて FETソケットの位置の変更、部品数の増加のため、新たに作り直しました。

 下のパターン図、および写真を見て分かるように、現在、基板(1)の右下部分に少々の空きスペースがありますが、当初、この部分に オリジナルサイト で言うところの R1 〜 R3 抵抗を乗せるつもりでいたのですが、基板の製作過程で急遽、取り止めにしました。

 複数本の抵抗を組み合わせてカットアンドトライで必要な抵抗値を得るというのですが、実際には、それを実現することは結構難しく(面倒で)あまり現実的ではないと思います。

 そこで、私は R1 〜 R3 抵抗をそれぞれ、多回転半固定ボリュームに置き換えることにしました。 この方法であれば電流値の調整も楽にできてしまいます。 しかし、ここで問題が起こりました。 この空きスペースに、3個の多回転半固定ボリュームを乗せることは可能ですが、そうした場合、半固定ボリュームの高さが 10 mm 以上ありますので、 ケース内にプリント基板(1)を収納することができなくなってしまいます。

 というのも、旧版のプリント基板(1)の実装では、ケース裏面側から見てアルミ中板の上に 5 mm のスペーサを挟んでプリント基板(1)を固定していたので、何ら問題はなかったのですが、 この改訂版では、プリント基板(1)の下に Id(Free) のボリュームが位置するために、10 mm のスペーサを挟んでプリント基板(1)を固定しています。

 そのため、プリント基板(1)の高さも極力抑えるように、下写真からも分かるようにトランジスタや電解コンデンサも寝かせてありますし、ピンヘッダも背の低いタイプのものを使用しています。 ここに 10 mm 以上の高さがある半固定ボリュームを実装することはできません。

 そこで、このプリント基板(1)には半固定ボリュームを実装することはあきらめ、プリント基板(3)を新たに作製することで実現しています。


 通常の使用時は、JP端子間をジャンパーしておくこと。

| プリント基板(1)パターン図 (部品面) (J-FET_CheckerII1PC.CE3) | ページトップ |

■ プリント基板(1)パターン図 (ハンダ面) ■

 被測定FETの取り付け用ソケットには、旧版と同様に耐久性を考慮して2組用意しました。 ラッピング用の SIP丸ピンICソケットを 3Pに加工したものに、 通常の SIP丸ピンICソケットをやはり 3Pに加工したものを継ぎ足して、高さの調節をしています。

| プリント基板(1)パターン図 (ハンダ面) (J-FET_CheckerII1PC1.CE3) | ページトップ |


(余談)

 このプリント基板(1)を作製するに当たっては、"秋月電子通商" のCタイプ(72 x 47.5 mm)片面ガラス・ユニバーサル基板を使用して、パターン図に示すように不要な部分をカットして、 必要サイズのプリント基板を得ていますが、ここで重要なことは、このプリント基板(1)では不要となった小さな端切れ部分ですが、これらを決して捨ててはいけません。 近い将来、必ずこの端材を必要とするときがやってくる筈です。
 私の場合の使用例としては新しいところで、例えば "174. グラフィック液晶表示 " の "プリント基板(2)パターン図" や、"102. ミリボルトメーター" の "コネクタケーブルの作製" などで使用している、フラットケーブルとコネクタの取り付け用基板とか、同じく "ミリボルトメーター" の "プリント基板(2)" で使用している、LED を固定するための目的など、決して主役ではないけれど脇役としてはなくてはならない役目が待っています。

■ プリント基板(2)パターン図 (部品面) ■

 プリント基板(2)については、旧版のものをそのまま転用しています。

| プリント基板(2)パターン図 (部品面) (J-FET_Checker2PC.CE3) | ページトップ |

■ プリント基板(2)パターン図 (ハンダ面) ■

| プリント基板(2)パターン図 (ハンダ面) (J-FET_Checker2PC1.CE3) | ページトップ |

■ プリント基板(3)パターン図 (部品面) ■

 プリント基板(2)やプリント基板(3)については、今までに溜めおいた端材の基板を使用しています。

 このプリント基板(3)は、プリント基板(1) の項で述べたように、苦肉の策で急遽作製したものであり、その取り付けについては ケース加工図 、 およびそこでの説明の写真等には、反映されていません。

| プリント基板(3)パターン図 (部品面) (J-FET_CheckerII3PC.CE3) | ページトップ |

■ プリント基板(3)パターン図 (ハンダ面) ■

| プリント基板(3)パターン図 (ハンダ面) (J-FET_CheckerII3PC1.CE3) | ページトップ |


■ パネルレイアウト ■ ■ パネル (印刷用) ■

 パネル面は、Excel で作図、印刷したフィルムを貼り付け、その上を2mm厚の透明アクリル板で保護をしています。

 旧版 のものと比べてレイアウトで大きく違う点は、ロータリスイッチが新たに増えたことで、それにともなってボリュームと被測定FET用ソケットの、 位置が変更したことです。
     

| パネルレイアウト Excelファイル (J-FET_CheckerII.xls) | ページトップ |

■ ケース加工図 ■

 使用したケースは、"テイシン" の "TB-59" モールドケースです。

 このケースを使用したことは、本機が非常にコンパクトに纏まったことが、最大の特徴で良かった点ではありますが、半面、工作をするのにいろいろと苦労をさせられました。 特に改訂版への改造では、プリント基板をケース内に収納するのに十分な空間を確保することが難しく、複数の基板に分離せざるを得なかったのは最も反省すべき点で、 やはり、もう一回り以上大きなケースにした方が良かったかもしれません。

| ケース加工図 (J-FET_CheckerIICS.CE3) |


 パネル面のレイアウト変更に対して、新たなケースを使用することは避け、旧版で使用していたものを再利用しています。 パネル面の追加の穴開け後に、表面に貼ってあるフィルムを新たなものに貼り変えただけです。 また、アルミ中板についても旧版のものを再利用しました。 したがって、次の写真のように余計な穴が開いていますが、それらを上のケース加工図には反映してありません。 ただし、パネル最上面の透明アクリル板については、新しい材料で作り直しです。

穴加工をケース上面側から見たところ 穴加工を裏面側から見たところ アルミ中板の穴加工の様子

 ロータリスイッチの取り付け位置が、旧版のボリュームの取り付け位置に置き換わり、改訂版のボリュームの取り付け位置は、ロータリスイッチの上部へと移動したため 新たな穴開けが必要です。

 また、パネル面の構造については、左下図のような断面になっていて図に示すように、パネル面全体の厚さは 5.7 mm となっていますが、実際にはアクリル板とケースパネル面との間に フィルムを貼っていますので、全体ではほぼ 6 mm 近くになるものと思われます。



パネル面の断面図

"秋月電子通商" - 参考資料 - データシート より抜粋

 ボリュームには、"秋月電子通商" が取り扱いの "Supertech Electronic" 社の小型ボリュームを使用していますが、その取り付けについては、 右上図に示すように、ボリューム軸のねじ部分が少々短いため、断面が約 6 mm の厚さのパネルには ナットを締め付けることができません。

 そこで、ボリュームとそのナットを締め付ける間の厚さを薄くするために、アルミ中板を抜いて ケースパネル面 + アクリル板 だけにすることにしました。 そのために下写真のように、前方後円墳のような形の、ボリューム外周より一回り大きな穴をアルミ中板に開け、ナットの締め付けにアルミ中板が邪魔をしないようにしました。

 また、ロータリスイッチの取り付けについては、"アルプス電気" SRRN シリーズの 4接点 3回路のものを使用しましたが、ボリュームよりも更に軸のねじ部分が短いため、 アルミ中板の厚さを抜いてもナットの締め付けができませんでした。

中板を上面側から見たところ 中板を裏面側から見たところ ロータリスイッチの取り付け板(サブアルミ板)の組み立ての様子を別角度から見たところ

 そこで、ロータリスイッチについては逆の発想で、パネル面にナットで締め付ける方法は止めて、アルミ中板だけに締め付け固定する方法を採りました。 ただし、締め付け用のナットの厚さが邪魔をしないようにと、写真のようなサブアルミ板(構造)を取り付けて、そのナットの厚さ分だけサブアルミ板が後退するようにしました。 なお、サブアルミ板の組み立てには、4本の M2 x 5 の皿ねじとナットを使用しています。

 下写真は実際に、サブアルミ板にロータリスイッチを取り付けた様子です。 パネル面からはロータリスイッチの軸だけが飛び出すことになります。


 上写真の最右端のものは、各コネクタ、スイッチ、ボリューム等を取り付けた直後で、まだ配線前でプリント基板も取り付け前の写真です。 (クリックすると 拡大 します)

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■ 使用部品表 ■

(主要部品: IC, トランジスタ等)

(データシート)
トランジスタ .................... 2SC1815GR
ツェナダイオード .................... RD5.6EB
ダイオード .................... 1S2076A

| 部品表 | Excel ファイル (J-FET_CheckerII_parts.xls) | ページトップ |

■ 参考サイト ■

FET & CRD選別冶具 .......... http://www.op316.com/tubes/toy-box/tester.htm
FET & CRD選別冶具(改訂版) .......... http://www.op316.com/tubes/toy-box/tester2.htm

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初版:2007年9月24日、初公開:2015年5月31日、最終更新:2023年10月31日