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075. サウンド・マシン
古いLSI ですが CSG (Complex Sound Generator) SN76477N のストックがたくさんあり、このICを使用した製作記事 (「 ラジオの製作」誌 19??年 3月号のコピーが
残っていた) を参考にして、"サウンド・マシン" を作製してみました。
米TI社の CSG SN76477 は、効果音発生用のICチップで、その昔スペースインベーダーゲームなどで使用されており、このICは1個で1つの音しか出せないので、
基板には複数個のICが搭載されていました。
余談ですが、この後に登場したのが PSG (Programable Sound Generator)で、音作りをソフトウェアでプログラム可能なようにした音源チップで、代表的な PSG である米GI社の
AY-3-8910 も複数個所有していますので、いずれ何らかの形で紹介したいと考えています。
当初、電源には安価なトランス式のACアダプタ(12V)を使用する予定でいたのですが、サイズが
少しばかり大きくてケース内に収まらないことが分かり、急遽小型のスイッチングACアダプタ(12V)に変更しました。
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■ 回路図 ■
| 回路図 (SoundMachine.CE3) | ページトップ |
■ ケース外観と内部の様子 ■
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正面から見たところ |
後ろ側から見たところ |
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全体の様子(斜め上から) |
全体の様子(真上から) |
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上蓋の様子 |
下蓋の様子 |
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天地逆(斜め上から) |
天地逆(真上から) |
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■ CSG SN76477 の機能説明 (データ・シートから一部を抜粋) ■
米TI社の CSG (Complex Sound Generator) SN76477N の、ブロック・ダイヤグラムとピン配置図を次に示す。
○印:この端子とグランド間にコンデンサを入れて定数を設定する。
□印:この端子とグランド間に抵抗を入れて定数を設定する。
△印:ロジック・レベルを加えてその動作を決定する。
◇印:アナログ電圧を加えて定数を設定する。
上図のブロック・ダイヤグラム中の各回路について、機能説明を次に示す。
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- SLF(スーパー・ロー・フリクエンシィ・オシレータ)
SLFは 20KHz 以上でも発振できるが、一般的には 0.1Hz から 30Hz の範囲で使用する。 その発振周波数は、Pin20 のRSLFと Pin21 のCSLFの
2つの外部部品によって、次に示す式で表すことができる。
SLFの出力信号の、デューティ 50%の方形波をミキサー回路へ、また外部VCO/SLF回路に三角波を送り出す。 もし Pin22 のVCOセレクトが "H" レベルのときには、
三角波をVCOの発振周波数を変調するためにVCO回路へ送り出す。
- VCO(ボルテージ・コントロールド・オシレータ)
VCO回路はトーン出力を作り出し、その周波数はこの回路のコントロール入力電圧によって変化する。 このコントロールはSLFの三角波か、外部で作られた
アナログ信号を、Pin16 の外部VCOコントロール端子に加えるかの、どちらかによって実行される。 VCOコントロールの方法は、Pin22 のVCOセレクトに加える
ロジックレベルによって選択され、"L" レベルを入力するとVCO周波数は、外部VCOコントロール端子に加える信号によって制御される。 また "H" レベルを加えると
VCO周波数は、SLF回路によって発生された三角波によって内部的に制御され、VCO出力は下図のように周波数変調された波形になる。 その変化はVCOに、
より高いコントロール電圧を加えるほど、より低い周波数となり、また、コントロール電圧がより低くなるほど、出力周波数は高くなる。
VCOの最低周波数は、Pin18 のRVCOと Pin17 のCVCOによって次に示す式で決定される。
VCOの出力周波数範囲は、内部回路構成から約 10 : 1 の比が設定されており、したがってVCOの最大周波数は、外部部品のRVCOとCVCOによって
決定された最低周波数の約 10 倍になる。 Pin16 の外部VCOコントロールを使用するとき(VCOセレクト端子に "L" レベルが入力された場合)、その電圧は 0 V から
2.5 V の範囲でなければならない。 もし 2.5 V 以上のコントロール電圧が加えられた場合には、VCO回路の出力は飽和状態になりサウンド出力は無くなる。
この動作は Pin9 のシステム・インヒビットを使わずに、サウンド出力をインヒビット状態にするときに利用ができる。
Pin19 のピッチ・コントロールは次の式で示すように、VCO出力波形のデューティ・サイクルを変えることができる。
Pin19 を "H" レベル(2.5 V 以上)にすることによって、デューティ 50%の出力波形を得ることができ、可変できる最小値は約 18%である。
VCO回路の出力は方形波で、ミキサー回路とエンベロープ・セレクト回路を経て、エンベロープ・ジェネレータ/モジュレータ回路の両方に送り出される。
- ノイズ・クロック
ノイズ・クロック回路は内部でクロック・パルスを発生し、それらをノイズ・ジェネレータ回路へ供給する。 内部でクロック・パルスを発生させるためには、Pin4の
ノイズ・クロック・コントロール端子とグランド間に抵抗を入れる必要がある。 通常その抵抗値は 47KΩであるが、より速いクロック比が必要であればより小さい値が
使用され、よりゆっくりしたクロック比が必要であればより大きい値が使用されるが、最大値は 100KΩである。
さらにゆっくりしたクロック、またはより正確なクロック比を必要とする場合には、Pin4 のノイズ・クロック・コントロール端子に "H" レベル(5 V)を加え、
内部のクロック回路を禁止にし、外部で発生させたクロックを、Pin3 の外部ノイズ・クロック端子に入力する。 そのクロックは "L" レベルが 0 V 以上 0.8 V 以下、
"H" レベルが 2 V 以上 5 V 以下を満足した方形でなければならない。
- ノイズ・ジェネレータ/フィルタ
ノイズ・ジェネレータは擬似ランダム・ホワイト・ノイズを発生し、ノイズ・フィルタを経てミキサ回路に入力する。 このフィルタ回路は Pin5 のRNFと
Pin6 のCNFによって構成されるロー・パス・フィルタで、そのフィルタが有効となる 3 dB のポイントは次の式で表される。
ノイズ・フィルタ・コントロール抵抗(RNF)は、IC内部の動作を安全に保つために最小値を 4.7KΩにしなければならない。
- ミキサ
ミキサ回路は3つの発振器からの入力の1つまたはその組み合わせを選択し、その出力をエンベロープ・ジェネレータ/モジュレータ回路へ送り出す。 このミキサ回路は
ロジカルなアンド機能を持っていて、ミキサ回路からの出力は Pin25, 26, 27 のミキサ・セレクト・インプットに入力するロジック・レベルによって、次表のように
選択される。
ミキサ・セレクト入力 |
ミキサ出力 |
C Pin27 |
B Pin25 |
A Pin26 |
L |
L |
L |
VCO |
L |
L |
H |
SLF |
L |
H |
L |
NOISE |
L |
H |
H |
VCO/NOISE |
H |
L |
L |
SLF/NOISE |
H |
L |
H |
SLF/VCO/NOISE |
H |
H |
L |
SLF/VCO |
H |
H |
H |
INHIBIT |
ミキサ・セレクト入力 C が "H" レベル、ミキサ・セレクト入力 A と B が "L" レベルのときのミキサ出力の波形は、下図のようになる。
車のエンジン音とクラクション、または機関車とホイッスルのように、2つの音を同時に出力するには、外部からミキサ・セレクトのモードをマルチプレクスするために
発振器を必要とし、マルチプレクサ周波数は 20KHz 以上、100KHz 以下に設定する。
このようにしてミキサ回路で作られた出力信号は、エンベロープ・ジェネレータ/モジュレータ回路に入力される。
- システム・インヒビット
システム・インヒビット回路は、サウンド出力信号を出力するか禁止するかを決定する回路で、Pin9 のシステム・インヒビット端子に "H" レベルを入力すると
サウンド出力はインヒビットとなり、サウンド信号は出力されない。 またこの端子に "L" レベルを入力するか、端子を解放状態にするとサウンド出力は出力される。
この入力はガンショット、ベル、爆発音のような瞬間的な音を発生するためのワン・ショット回路をトリガする機能も持っている。 このシステム・インヒビット入力は
サウンド出力をすべて出力するために、ワン・ショット時間を加えた時間の間 "L" レベルに保持しなければならない。
- ワン・ショット
上述のように、ワン・ショット回路は瞬間的な音のために使い、その音は Pin9 のシステム・インヒビット入力端子の "H" レベルから "L" レベルへの変化でトリガされる。
ワン・ショット時間は Pin24 のROSと Pin23 のCOSによって、次に示す式で表すことができる。
ワン・ショット時間の最大は約 10秒で、もしワン・ショット動作がシステム・インヒビット入力に "H" レベルを入力することによって、ワン・ショット時間以前に
終わるような場合、再びワン・ショット動作をトリガするには、内部のラッチ回路がリセットされた後でなければならない。
ワン・ショット回路の出力は、エンベロープ・セレクト回路を経てエンベロープ・ジェネレータ/モジュレータ回路に送り出される。 この動作はエンベロープ・セレクト入力によって
ワン・ショット・エンベロープが選択されたときに限る。 ワン・ショット回路はサウンドを発生する回路ではないが、ミキサ回路によってエンベロープ・ジェネレータ/
モジュレータ回路へ入力したサウンドに、エンベロープ機能を付加する。
- エンベロープ・セレクト
エンベロープ・セレクト回路は次表に示したように、ミキサ出力に加えるエンベロープを決定する。
エンベロープ・セレクト |
エンベロープの機能 |
参照波形 |
1 Pin1 |
2 Pin28 |
L |
L |
VCO |
A |
L |
H |
ミキサ入出力のみ (エンベロープ機能なし) |
B |
H |
L |
ワン・ショット |
C |
H |
H |
VCOの1/2 |
D |
- アタック/ディケィ・コントロール
アタックとディケィ回路は、エンベロープ・セレクト回路によって選択されたエンベロープの、立ち上がりと立ち下がりを変化させる働きを持っている。 Pin8 の
CA/Dはアタックとディケィ機能の両方に使用される。 Pin10 のRAは CA/Dを充電する内部電流を設定し、それによってエンベロープの
アタック(立ち上がり)時間が決定され、Pin7 のRDは CA/Dを放電する内部電流を設定し、それによってエンベロープのディケィ(立ち下がり)
時間を決定する。 その時間は次に示す式で求めることができる。
もしミキサ出力のみ、またはワン・ショットがエンベロープ・セレクト入力によって選ばれた場合には、Pin9 のシステム・イネーブル入力に "L" レベルを入力したときに
アタック動作が開始する。 もしVCOまたはVCOの 1/2 がエンベロープのために選ばれた場合には、VCOの波形の立ち上がりのたびにアタック動作が開始される。
ディケィの部分はサウンドの終わりとしてサウンドの大きさを減衰させる。 ディケィ動作はミキサ出力のみの動作の場合には無効となるが、ワン・ショットVCO、
VCOの 1/2 のエンベロープにおいては、エンベロープ波形の "H" レベルから "L" レベルへの変化のたびに作動し、サウンドの大きさを減衰させることによって
サウンド出力に余韻を持たせることができる。
ミキサ出力がノイズでワン・ショット・エンベロープが選ばれた場合の波形は、次図に示したようにアタックおよびディケィ動作ができる。
また次図は、ミキサ出力がノイズ、エンベロープ・セレクトのモードはVCOの場合の、アタックおよびディケィの変化を示したものである。
- 出力アンプ
出力アンプ回路はサウンド変調器および外部アンプ回路と接続するために設けられている。 この回路は Pin12 と Pin13 との間にフィードバック抵抗RFと、
Pin11 にアンプリチュード・コントロール抵抗RGがグランドとの間に必要である。 Pin13 のオーディオ出力は、エミッタ・フォロワになっており、2.7KΩから
10KΩのプルダウン抵抗を入れなければならない。 出力のピーク電圧は、次の式で求めることができる。
出力レベルは 2.5 Vp-p でリミットがかかり、それ以上はクリップされる。
- レギュレータ
電源を供給する方法は2つあり、1つは安定化されている5Vを Pin15 のVREG入/出力端子に供給し、Pin14 のVCC入力端子を開放する方法で、
もう1つは安定化された電圧供給源を持たないシステムの場合、 7.5 V 以上 10 V 以下の電圧を Pin14 のVCC入力端子に供給し、内部回路に安定化した5Vを
供給するとともに、Pin15 のVREG入/出力端子から出力される安定化された5Vを外部回路へ供給する方法で、この場合供給できる電流値は最大 10mA である。
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■ プリント基板パターン図 (部品面) ■
| プリント基板パターン図 (部品面) (SoundMachinePC.CE3)
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■ プリント基板パターン図 (ハンダ面) ■
| プリント基板パターン図 (ハンダ面) (SoundMachinePC1.CE3)
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■ プリント基板 (2) ■
■ プリント基板 (3) ■
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■ 足ピッチ変換 (シュリンクDIP 400mil → DIP 600mil) 用 ICソケットの作製 ■
SN76477N はシュリンク28ピンDIP−ICで 1.778mm と足ピッチが狭いため、このままでは普通のユニバーサル基板の 2.54mm には載せられない。
そこで、シュリンクDIP400mil と DIP600mil の ICソケットを使用して足ピッチの変換をした。 以下に変換用ICソケットの作製法を示す。
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上側は通常の28ピンDIP−ICソケット (バンディ社製)
下側はシュリンク28ピンDIP−ICソケット (TI 社製)
共に上面より見た写真
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上側は通常の28ピンDIP−ICソケット (バンディ社製)
下側はシュリンク28ピンDIP−ICソケット (TI 社製)
裏側にして各足ピンを、斜め上より見た写真
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銅細線
ACコードの被覆を剥き、中の裸線を使用する
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まず、シュリンク28ピンDIP−ICソケット (TI 社製) の足ピンを、外側90度横に開く
その後、各足ピンの根元に銅細線をハンダ付けする
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同じものを上側より見た写真
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コニシ株式会社製の「ボンドクイック5」
2液混合型のエポキシ樹脂系接着剤
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大小2つのソケットを積み重ねて接着したところ
ゴムバンドで固定し、・・・・・ 待つこと数時間
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接着剤が乾いたところで、各ソケットの同番ピンどうしを銅細線で結線し、 大きいソケット側の足ピンも根元でハンダ付けする
結線の終了後、絶縁と補強の目的で再度接着剤を塗っておく
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完成 !!
上側より見た写真
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■ パネルレイアウト ■
■ パネル (印刷用) ■
パネル面は、Excel で作図、印刷したフィルムを張り付け、その上を2mm厚のアクリル板で保護をしています。
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| パネルレイアウト Excelファイル (SoundMachine.xls)
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■ ケース加工図 ■
使用したケースは、"タカチ" の "YM-180" アルミケースです。 (図中の太線の○は現物合わせを要す)
| ケース加工図 (SoundMachineCS.CE3) |
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3つの黄色○の穴に、皿ねじ(M3x25)とスペーサー(M3x15)を
使用して支柱を立て(下写真)、それでプリント基板を支える |
パネル面(ケース上蓋)の穴加工 |
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中板の穴加工 |
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リアパネル(ケース下蓋)の穴加工 |
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電源スイッチ、ヒューズホルダ等を取り付け、内側から見たところ |
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各種スイッチ、ボリウム等を取り付けたところ |
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■ 使用部品表 ■
(主要部品: IC, トランジスタ等) |
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(データシート) |
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サウンド・ジェネレータ |
.................... |
SN76477N |
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オーディオ・パワーアンプ |
.................... |
LM386N |
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三端子レギュレータ |
.................... |
NJM7809 |
| 部品表
| Excel ファイル (SoundMachine_parts.xls)
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■ 参考資料・書籍 ■
データ・シート SN76477N 日本語版 ..... ( 2014/4 現在、http://www.technobase.jp/eclib/OTHER/DATASHEET/sn76477n.pdf から入手が可能 )
雑誌 「ラジオの製作」 19??年 3月号 P.109-115 「1LSI サウンド・マシーンの製作」 桜井充雄氏
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初版:2007年1月2日、初公開:2014年4月8日、最終更新:2023年11月2日